RE: 朝霧の家|Phase 4:工事監理

RE: 朝霧の家|Phase 3:実施設計」の続編

工事契約が交わされますと、いよいよ着工となります。形式上、設計の仕事は終わり、監理というフェーズに入ります。私たちIZOでは Phase 4 と呼んでいます。

設計の仕事は終わったからあとは現場の工事監督さんにお任せしてのんびりできる、ということにはなりません。

着工後は、それまで設計者という私たちの呼び名も着工後は工事監理者と変わります。大手設計事務所などでは場合によっては文字通り設計者と工事監理者が別人のことがありますが、IZOでは一気通貫して担当します。

また専門的には現場監督さんのお仕事は施工管理と言い、同じ「かんり」という言葉でも表記が異なります。業界では「監理」のことを「サラカン」、「管理」のことを「タケカン」と呼び分けます。お分かりだと思いますが「監」と「管」の部首を指しています。

工事監理者は、設計図書のとおりに工事が行なわれているかを確認し、欠陥の発生を未然に防ぐ役割を担っています。お固い話で恐縮ですが、建築士法第2条第6項に「その者の責任に置いて、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」とされています。文面を読むと、業務としては設計者とは別の人でも十分可能です。

ところが、それ以外の業務として設計変更や追加工事の対応というのがあります。特に改修工事では、既存部分を解体すると竣工図書や私たち専門家が想像していたものとは異なる現状が姿を現すことも少なくありません。そういう場合は、解決案を導くにあたり瞬発力を要することも多いのです。


さて、工事請負契約も交わされ、2002年2月5日に着工と決まりました。
着工に先立ち、クライアントご夫婦も近所にアパートを借り仮住まいとなりました。
そんなこのプロジェクトでは着工後に大きな追加変更がありました。外装のルーバーの設置は着工後に出てきたアイディアだったのです。

着工後早期の段階だったと思いますが、施工を担当してくれることとなったエイ・クラフトの橋本社長からここまでの改修になれば外観のデザインも変更すべきではないかという一言からはじまったと記憶しています。もちろん大きな増額請求はしたくありませんでしたので、現場の近くの喫茶店で休憩中に一緒にいろいろ考えました。そこで、橋本社長から断面が30×50の米杉なら反りも少なく手に入りやすいからどうだろうという提案を頂き、それを使ってデザインを進めることにしました。

上の図面は最終形とは異なりますが、写真にもあるように材の向きや間隔に変化をつけて張り分け、それがこの家の表情にもなることを狙いました。

玄関廻りは防犯上から見通せるようにし、2階のリビングの窓に対して外からは見えにくくするように工夫しています。

また図面にもありますように玄関までのアプローチにアスロックという厚さ6cmの押出成形セメント板を床材として使用しました。施工会社は施工責任を負いますので、本来壁材であるセメント板を床に使ってもいいのかと執拗に訊いてきました。ぼくは実際別のプロジェクトで使ったことがあったので大丈夫だと言っても納得してくれません。結局、いろいろ考えた末、元上司の玄関先でも使っていたことを思い出し、連れて行くことにし、現物を見て納得してもらい、施工してもらうことになりました。

私たちの工事監理の方針は、基本的に工事施工者の意見も十分尊重し、建設的な設計変更はどんどん受け入れます。ただし、品質上はもちろん意匠上でも譲れない部分は徹底的に協議していきます。これまで設計という立場の考え方だったところに新たに施工者という考えが入ることで、設計者の100%の考えの通りに進まないことも実は面白いところなのです。

特にこの施工を担当したエイ・クラフトの橋本社長は、ぼくがこれくらいで十分だなと思っても、気に入らないからやり直すという熱い人でしたので意見がぶつかる場面はよりよい改善策に対してでした。

家具や木製建具のアイディアも、ぼくが積層合板の小口をそのまま見せたいと言うと、オリジナルでメープル材を表面材とした積層合板をつくってくれました。それを家具のみならず建具枠まで同じように揃えました。

そんな楽しい現場も2002年4月27日には無事完成し引渡ました。

以上で「Phase 4:工事監理」の話は終わります。

次回はプロセスの最終回となる「Phase 5:還元」です。

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