RE: 朝霧の家|Phase 1:現地調査

はじまり《現地調査》

このプロジェクトは、自分たちが高齢者となる前に快適に暮らすことのできるように家を改修したいという要望からはじまりました。

具体的には、階段に手摺をつけたい、風呂をやりかえたい、部屋を美装したい、という程度のものでした。

実際に拝見させて頂くこととなり、後日現地を訪れました。

すると、手摺をつけて美装するだけでは快適さを得られないということがわかりました。
上の写真が改修前の外観です。鉄筋コンクリート造のラーメン構造(柱梁による構造)であることがすぐにわかります。一昔前の派出所のように柱と梁が外部に出てきている構造です。後日この家の図面と構造計算書をお借りするのですが、それを見るとやはり単純ラーメン構造によるものでした。

上の図が改修前の図面です。実際は図面を元にこちらで作成した資料です。

敷地条件(立地条件)としては、東側と南側には隣家がぎりぎりまで接しています。西側と北側は道路に接しています。北側は道路の向こうは公園になっています。南側に隣家が迫っているために南面採光が確保しづらくなっています。

家の中に入ってみます。

街中でよく見かける風景ですが、玄関が道路ぎりぎりについています。図面でもわかると思いますが、扉を開けると敷地を越境してしまう位置についています。1階の床の高さが道路面から50cm程度高くなっていますので、その高さまで上がるためには、道路境界ぎりぎりのところでまず1段上がり、玄関扉を開けてもう1段、上がり框で床レベルまで上がることとなっています。

生活のメインの場は、1階のDK(ダイニングキッチン)とL(リビング)の部分です。特にこのLは南側に出っ張った西側からしか採光がありません。その唯一の窓は磨りガラス状の型板ガラスではめ殺し窓となっているために光もほんのりとしか入ってきませんし、窓が開かないので風が入ってきません。薄暗くてなんとなくじめじめした場所となっていました。

DKもキッチン流し台と吊り戸棚との隙間からと、隣家が迫る南側の窓となり、上写真のようにその窓に重なって物が置かれているために、やはり採光として十分なものとは言えない状態でした。Lの部屋もDKも昼間から照明をつけないと薄暗い環境で、風通しもよくないことがわかります。

階段は、古い住宅が大抵そうであるように、急で上り下りがちょっと辛い。特に急勾配の階段の場合は、上りよりも下りがむつかしいものです。そんな急な階段に手摺もついていませんでした。

2階には小部屋が多く、実際は寝室として使われている部分を除けば、ほとんど納戸として使われていました。2階の西側に窓が二つありますが西日が強いために、居場所としてはなかなか使えないということでした。

2階は西日の問題はあるものの、北側の公園に向かって広がる眺めは、その景色というもの以上に空が広がっているという印象がとても気持ちのいいものだと感じました。公園なので将来に渡って何も建物が建たないということが保証されています。

以上が現地を確認した時の内容です。

これらの条件から、この住宅に最も相応しい解を提案することとなります。

次回は、「Phase 2:基本設計」です。